今では「古っ!」と一笑に付されてしまいそうだけれど、その昔、片岡義男の小説に心動かされ、一年のうち2ヶ月間はハワイで過ごしていた。
辻堂とノースショアでサーフィンをして、逗子とマウイでウィンドサーフィンをした(わたしはヘタなので大きな波ではできないけどね)。
トロピカルな写真が流行し、南の島の海の透明度に驚いた。
繰上和美氏、上田義彦氏が広告界の写真において一世を風靡し、浅井慎平氏、佐藤秀明氏、横山泰介氏が美しい南の海の写真やサーフィンの写真で有名だった。
(三好和義氏はこのだいぶんあとだ!)
冬のノースショアのビーチには、世界中から集まった超長い望遠レンズを三脚に構えたフォトグラファーたちが、沖でビッグウェイブを捉えるサーファーをファインダーごしに追いかけていて、
周囲には美しい金髪ビキニのガールフレンドや、砂まみれで自由に走りまわる黒いラブラドール(なぜかクロラブが多い)のような犬たちが思い思いに過ごしていた。
風も波もすごくて、太陽の光も素敵だった。
夜には波の音を聴きながらたき火を囲み、暖かい夕食に満足して多いに笑った。
少し肌寒くなっても、みんなでベランダのジャクージに脚をつければ話しが終わることもなく夜明けまで続き、
星がたくさん流れていった。
次の日も、大きな波が来るビーチを探して島の周囲の道をドライブする。
サトウキビの畑が延々続く中を、全開にした窓からビュンビュン入る風に全身を委ねながら運転するとすぐに眠くなる、気持ちよすぎて。
その頃日本では六本木の街が米軍の兵士たちでいっぱいで、ディスコは街に繰り出してきたサーファーで溢れていた。
わたしの一つ下の年代くらいから7~8歳上の年代くらいまでの人たちの年代だろうか。
今ではチョイ悪オヤジとかチャラ爺とか言われる世代ですね!
2歳下になるとYMOの影響で世の中はテクノポップになったからなあ。
瀬利奈の前には主を待つ黒塗りの車が並び、女性は男性を同伴すれば無料でディスコに入れた。
バイキングのお料理が並んでいるので、無料の晩ご飯を食べにディスコに行っていたみたいなもんですね!
やがてはアメリカ本土やヨーロッパに興味が移り、世界中のあちこちに行ったけれどやはりどこに行っても海が好きだった。
海なしでは息が詰まりそうになる。
そんな30年近く前の青春時代に知り合い、随分とそのライフスタイルや作品に憧れた佐藤秀明さんが、久しぶりに個展を開いていらっしゃるので観に行ってきた。
サーフィンの撮影で有名な写真家だったが(そうだ、かの片岡義男の本の装丁は佐藤さんの写真だった!)、ブームが去ったあとはお好きなアウトドア系のあらゆる写真を撮られていて、辺境写真家と称していらっしゃる。
作家の椎名誠さんやカヌーイストの野田知佑さんらと一緒に活動したりしなかったりしている第二次あやしい探検隊のひとりでもある。
今回は、野田さんと愛犬第八代目『ガク』(今やガクという名前ではないらしい)、その他のあやしい探検隊メンバーで行かれた夏のユーコン川下りの一ヶ月の写真だった。
ハワイの町なかで偶然佐藤さんに遭遇しても、
「おう、なにやってんだこんなとこで! 居酒屋に行こう、居酒屋に!」
と、気軽に誘ってくださる方だ。
フェイスブックでつながってはいたものの、お目にかかるのは20年ぶりくらいだろうか。
ドキドキしながらギャラリーに入ると、佐藤さんは当時と何も変わらない感じで暖かく迎えてくれて、展示された写真についてとても詳しく撮影談をしてくれた。背が高くて、透明な感じの人だ。
翌日、メールをいただいた。
「きのうはありがとう。胸が少し痛くなりました、懐かしくて。」
と、書いてあった。
なんだかそのメールを読んだとたんに、わたしの脳裏にこのブログの前半に書いたような当時のことがうわぁーーっと押し寄せてきて、わたしも胸がきゅんとなったという次第だ。
素敵な日々だったよなぁー。
いえいえ、今のこの時もまだまだ青春真っ最中にしなくては。
何十年か後に、今この年代のことを同じように懐かしく思えるように、毎日を心地よく笑って生きていきたいと思う。
佐藤さんの写真は、私にとってはなんだかほんとうに胸を熱くするノスタルジーに溢れている。
大好きな写真家。