デニス・バンクス 自伝
『死ぬにはよい日』よりの抜粋です。
産まれたばかりの赤ちゃんの命名に、矢を使う方法が有る。祖父に当たる者が空に矢を放ち、矢が落ちた場所にある植物、動物の足跡、岩などにちなんで名前をつけるのだ。
わたしのオジブエ族の名前「ナワ・カミッグ」は、矢ではなくジョッシュ爺さんの見た夢が元になってつけられた。
「宇宙の中心」という意味を持つ。
祖父は、いつか私が母なる大地のために、あらゆる生きとし生けるもののために、そしてわれわれオジブエ族の生存を賭けて闘う運命にあることを夢のお告げで知り、この名前をつけたのだ。
この名前は神聖であり、名前に恥じないように生きなさい。と、祖父は言った。
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フクロウや狐に出くわしたら狩りは中止じゃ。不吉なことが起こる前触れだ。むやみに獲物を殺してはならぬ。鹿を仕留めても、決して鹿の気持ちを害するようなことを口にしてはいけない。『今日は二頭も鹿を殺したぞ!』などと得意になってはならぬ。鹿をお創りになった偉大なる精霊は、そういう行為を好ましく思わないのだ。むしろ仕留めた鹿の周りにタバコを捧げて、鹿が人間のために命を投げ出してくれたことに深く感謝して祈りなさい。
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太鼓は母なる大地の鼓動。
雲は夢、心のヴィジョン。
この世界からもう一つの世界に向けて、魂が上昇するように祈るのだ。
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メディスンマン、レオナルド・クロウ・ドッグは必要と有ればどんな手術でもてがけた。膝を撃たれたミロ・ゴーイングの手術は、まずレッドウッドと呼ばれる特別な薬草で患部を麻痺させることから始まった。
薬草が効いたところで、ポケットナイフで弾丸を取り出し、傷口に化膿止めの別の薬草を塗って、患部を鹿の腱で縫う。薬草の麻酔が効いて、なにも痛みを感じなかったとミロは語る。傷口も短期間で癒えた。
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どれも、とても魅力的なおとぎ話みたいだけど、ほんの数十年前のできごとを書いているデニス。
とても深いまなざしをしています。